ラピュタ・アニメーション フェスティバル vol.1 2000
Laputa Animation Festival Bulettin

No.1 Aug 4,2000
 
ユーリー・ノルシュテイン氏7回目の来日
8月4日ラピュタ阿佐ヶ谷にて記者会見開催
 
 日本に愛を向けるロシア人アニメーション監督、ユーリー・ノルシュテイン氏が7回目の来日!
 阿佐ヶ谷の小さな映画館ラピュタで実施中のノルシュテイン大賞審査員として招かれている。

 このコンクールについてノルシュテイン氏は、優勝者を選ぶのもアニメーション作品を製作するのと同じくらい大変なこと、参加者以上に私自身がドキドキしていると話した。

------小説家や画家は孤独の中から新たな芸術を生み出すが、映画は同僚や仲間とまた時には敵とも共につくっていくもの。現在、ロシアでも孤独にアニメーションをつくるアーティストが増えてきたが、以前は18時間ぐらい続けて仕事をしていても、スタジオには笑いとジョークが絶えなかった。それぞれの作家が互いに交流することなく作品をつくるのは大変なこと、互いに充電しあって欲しい。1本の薪だけでは焚き火さえも実現しないのだ。

スタッフ、ノルシュテイン氏を見送る(ノルシュテイン・画)

ノルシュテイン氏来日(ノルシュテイン・画)


 ノルシュテイン氏は今回のコンクールが日本アニメーションの新たな一歩になれば嬉しいと語った。

 また、日本の若いアニメーターの作品を審査するにあたり作品の中に流れる作者の可能性を見出したいという。

------芸術にたずさわることは愛情をもってしなければできないこと。女性への愛、ふる里への愛など様々な愛が作者を通 じて表現されていくことが何よりも大切。日本のポエジーな感覚に触発された自分の日本文化への愛は製作するアニメーションへ反映され、それが日本上映され、そしてまた影響し合い全体が円を描いている感じだ。

 本日、アニメーションフェスティバルで上映された30年代の日本アニメーションにも深い興味関心を抱いたノルシュテイン氏。特に、政岡憲三監督の『くもとちゅーりっぷ』を絶賛。キャラクターの演技、リズム感、映像技術、線画の力について高く評価していた。特に雨の滴が跳ね上がる現象をとらえた場面 で、ディテールに対する細心の注意、素晴らしい広がりに感動し感嘆の声をあげていたとのこと。
 映像詩人ノルシュテイン氏のお気に入りな季節は秋。ロシアの針葉樹林は黄金色に紅葉して最高に美しいようだ。彼は近所の公園を散歩したり、シーズンになると池で水泳を楽しんだりと豊かな自然を楽しんで暮らしている。1週間のほとんどをスタジオで過ごしている彼には真夜中の電話や来客もしばしば。国立モスクワ大学でも教鞭をとっている彼を訪ねてくる学生は多く、瞬く間に楽しい宴が繰り広げられるらしい。そんな訪ね人たちを午前2時をまわっていようとも快く受け入れ共に時を過ごすことを楽しみ、「自分が生きている証」と微笑む。

 気になるのは未完成作品『外套』だが、TV関係の仕事依頼を受けたことによりここのところ製作状況が順調に進んでいなかったが今後は他の仕事をひかえ、来年8月には第1部(約30分)を発表する予定だ。

 これからも映像詩人ユーリー・ノルシュテイン氏から目が離せない。(原)

モスクワのスタジオにて、ノルシュテイン氏訪日のあいだ
羽根
をのばすスタッフたち
(ターニャ(イラスト左端)・画)