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岡本喜八全作品一挙上映!
*フィルモグラフィー
1958 結婚のすべて 東宝 デビュー作。適齢期の女性の結婚に対する、気持の揺れを描く。雪村いずみ以外は地味なキャストだが、セリフの途中でもカットをボンボンと変えるスピーディな演出で都会的な雰囲気を出している。
出演:雪村いずみ、新珠三千代、上原謙、仲代達矢
  若い娘たち 東宝 才能開花!登場人物たちのスピーディーなセリフやリズミカルなカット割りなど、岡本監督が個性を発揮。田舎町の娘たち医大生たちとの、コミカルな恋。学園祭で、ミッキー・カーチスが歌い踊る。
出演:雪村いずみ、水野久美、山田真二、三宅邦子
1959 暗黒街の顔役 東宝 3作目にして、初のアクション。足を洗うと決めたヤクザと、それを阻む暴力団の対決をハードボイルド・タッチで描く。平田昭彦のインテリ・ヤクザや三船敏郎の職人気質の自動車修理工など、凝った人物描写も見どころの一つ。
出演/鶴田浩二、宝田明、三船敏郎、草笛光子、柳川慶子、白川由美
  ある日私は 東宝 黒沢明の『隠し砦の三悪人』に続いて、上原美佐が主演。彼女の心の強いキャラクターとスタイルの良さに支えられてソフィスケイトされた女性映画になった。ズームや移動撮影も頻繁に、華やいだムード。
出演:上原美佐、宝田明、水野久美、星由里子
  独立愚連隊 東宝 日本初の、戦争娯楽アクション。弟の死因を調べるために満州にやってきた従軍記者が、ハグレ者部隊=独立愚連隊と共に、私腹を肥やす上官を叩きのめす。最後に襲いくる中国軍を皆殺しにするシーンは“残虐だ”との批判をあびたが、戦うこと自体ではなく(メイン・ストーリーに見られるように)日本軍の戦い方こそを批判したところに、戦中派の岡本監督らしいアイロニカルな視点がうかがえる。頭が変になって訳の判らぬことを怒鳴る三船敏郎は、後の8・15シリーズの先取りパロディだ!
出演:佐藤充、中谷一郎、雪村いずみ、中丸忠雄、上原美佐、三船敏郎、鶴田浩二、江原達治、夏木陽介、沢村いき雄、中山豊、谷晃、塩沢とき
1960 大学の山賊たち 東宝 吹雪のために山小屋に閉じ込められた大学生たちとデパート・ガールの一行と、指名手配中のギャング2人が入り乱れて大騒動。映画が始まっていきなり‘終’のマークが出るなど、遊び心に満ちた作品。
出演:久保明、江原立怡、ミッキー・カーチス、上原謙、越路吹雪、鶴田浩二
  暗黒街の対決 東宝 2大暴力団が対決する町に着任した刑事が互いをそそのかして全滅させる、というハードボイルド御馴染みのストーリー展開だが、この作品は刑事の強さや殺し屋のブキミさをパロディ化している。三船刑事は因縁をつけたチンピラの襟首を掴んでパシパシパシッ!と笑っちゃうほど凄いスピードで往復ビンタを喰わせたり、天本英世らの殺し屋グループは黒ずくめの衣裳でコーラスを歌わせられたり・・・。かといってコメディではなく、陰々滅々の物語の、中和剤の役割を果たしているのである。
出演:三船敏郎、鶴田浩二、司葉子、河津清三郎、中丸忠雄、堺左千夫、田崎潤、佐藤充、平田昭彦、天本英世、夏木洋介
  独立愚連隊西へ 東宝 前作への批判を受けて、誰も死なない不思議な戦争映画となった。フランキーが演じる中国軍の隊長が絶品で、いつもニコニコとして、敵である加山を誉めちぎるという、類を見ない楽しいキャラクターを作った。中国軍に奪われた軍旗を捜す旅に出た御馴染み独立愚連隊の冒険たんだが、真の敵は裏切り者の上官、引いては日本軍そのものだという構図は前作から引き続いてののも。敵軍と向かいあうときより、上官と話すときの方が殺気立つところが、やっぱり愚連隊らしくて嬉しくなる。
出演:佐藤允、加山雄三、フランキー堺、久保明、平田昭彦、中谷一郎、堺左千夫、中丸忠雄、中山豊
1961 暗黒街の弾痕 東宝 ヤクザどうしの抗争ではなく兄の死因を追求し、産業スパイと黒幕の暴力団に戦いを挑む青年の物語。加山雄三の主演で、夜中の野球場のシーンなど、全編がスポーツのような軽快さに溢れている。
出演:加山雄三、佐藤允、三橋達也、中谷一郎
  顔役暁に死す 東宝 大藪春彦の原作なのでスタイリッシュなヤクザたちの抗争物語になっている。続いて主演の加山雄三は、地方都市の市長であった父を射殺した犯人を捜して、2大暴力団対立に巻き込まれてゆく・・・。
出演:加山雄三、平田昭彦、水野久美
  地獄の饗宴 東京映画 戦時中に鬼上官として自分を苦しめた男の横領犯罪を嗅ぎつけた主人公は、彼の元愛人と組んで恐喝をたくらむ・・・。ムーディな雰囲気が漂う、日本版のフィルム・ノワールで破滅的ヒーロー像が印象的。
出演:三橋達也、団令子、田崎潤、砂塚秀夫
1962 どぶ鼠作戦 東宝 中国軍に誘拐された新任大尉の救出に向かった、ゴロツキ兵たち。独立愚連隊シリーズ新展開の、戦争映画に形を借りた冒険アクションだ。敵の目をくらますのに忍法火遁の術を使ったり、飛び散る火花に「すわ、爆撃か!」と身を伏せると実は中国人の嫁入り祭りだったりと、コメディの要素がつまっている。アクションが絶え間なく続き、日本版『インディ・ジョーンズ』といった趣さえある。ゴロツキ愚連隊は、国のためにでも軍に命令されたからでもなくて、冒険好きの血が騒いだからこそ、戦うのだ!
出演:加山雄三、佐藤允、夏木陽介、砂塚秀夫、中谷一郎、田中邦衛、江原達怡、中丸忠雄、上原謙、藤田進、ミッキー・カーチス
  月給泥棒 東宝 無責任シリーズの番外編みたいな、サラリーマン喜劇。カメラ会社の営業マンが、ライバル社と大口取り引きを競う。外国の貿易商に扮するジェリー伊藤が音楽にあわせて見せるパントマイムは、抱腹絶倒!
出演:宝田明、司葉子、宮口精二、浜村純
1963 江分利満氏の
優雅な生活
東宝 青年時代は戦中戦後の混乱期に翻弄され、中年になってからは高度経済成長の喧騒に振り回される男の喜悲劇。と言うと堅苦しく聞こえるが、舞台劇風の演出/ストップ・モーション/柳原良平のアニメと様々な手法を駆使して湿っぽさを感じさせない傑作。100回笑えて、20回泣けます。父や母の死など悲しい出来ごともコミカルなタッチで描かれるところに、波乱の戦後への監督の屈折した思いが満ちあふれている。時を変え場所を変え、延々続くラストの江分利の独白は、そのしつこさゆえに悲しみと迫力が漂う。
出演:小林桂樹、新珠三千代、東野英治郎、ジェリー伊藤、横山道代、中丸忠雄、桜井浩子、二瓶正也、西条康彦
1963 戦国野郎 東宝 「独立愚連隊」の世界を、そのまま戦国時代に移した異色の冒険コメディ。木下藤吉郎から大量の火縄銃の運搬を頼まれたゴロツキ馬借隊と、同行の忍者が、行く手を阻む敵との対立を繰り広げてゆく。
出演:加山雄三、佐藤允、中谷一郎、田崎潤、江原達怡、砂塚秀夫
1964 ああ爆弾 東宝 先立って名画座で公開された時には超満員で、扉が閉まらないほどのヒットだった。アッ!と驚く、ニッポン・ミュージカルの傑作だ。能楽/浪曲/御詠歌/果ては落語のお囃まで、ありとあらゆる日本的音楽をバックに、老ヤクザ役の伊藤雄之助は踊るように演技する。ム所に入っていた間に、町は新興の市会議員に牛耳られていた。許しちゃおけぬと、殴り込み!役者たちが突然に歌い出すことの不思議さを逆手にとり、開き直って?コメディに仕上げた、とんでもないカルト映画。
出演:伊藤雄之助、砂塚秀夫、越路吹雪、中谷一郎、沢村いき雄、本間文子、二瓶正也、有島一郎、桜井浩子、天本英世
1965 東宝、
三船プロ
これも、時代小説の名作(『侍ニッポン』)の映画化。“桜田門外の変”の首謀者一味の緻密な計画と、実行までの紆余曲折を描いた。「敵のなかにも味方がいて、味方のなかにも敵がいる」という設定で表現される戦いの空しさは、『独立愚連隊西へ』と共通のもの。この作品では、味方どうしがつまらぬ誤解や行き違いのために殺しあう悲劇に主眼が置かれている。実は平和を願う好々爺であったという設定の井伊直弼が、黒い吹雪のなかで無惨に斬首されるシーンは、激しく厳粛な儀式のようだ。
出演:三船敏郎、小林桂樹、伊藤雄之助、新珠三千代、東野英次郎、平田昭彦、藤田進、志村喬、田村奈己、八千草薫、杉村春子、中丸忠雄、黒沢年男
  血と砂 東宝・
三船プロ
『独立愚連隊』のゴロツキどもとは違い、年端もいかない少年たちが主人公。軍楽隊員の彼らは、地の涯てのような中国大陸で青春を過ごし、激しい戦闘の末に鼓笛を陽気にならしながら玉砕してゆく。
出演:三船敏郎、仲代達矢、大沢健三郎、根津克巳、樋浦勉、阿知波信介
1966 大菩薩峠 東宝 名作時代小説の映画化なのだが、見境なく人を斬りまくる仲代達矢が凄まじく、スプラッタのような迫力に圧倒されてしまう。敵討ちを巡る因縁話よりも、凝りに凝った惨殺シーンの演出が見どころだ。
出演:仲代達矢、加山雄三
1967 日本の一番長い日 東宝 昭和20年8月14日の正午から、翌15日の正午に玉音放送が流れるまでの24時間に、政府と陸軍の人々がとった行動を網羅し、ドキュメントタッチで描いた超大作。政府は玉音の内容を巡って、いつ終わるとも知れない会議を続ける。陸軍の青年将校たちは終戦を不服とし、本土決戦を叫んで皇居を占拠した!一般諸民はまったく登場せず、国家の運命を握っていた人々の24時間だけで、日本とは何か?を問いかける。反乱将校隊の師団長斬殺や首相官邸襲撃など、スペクタクルにも満ちている。
出演:三船敏郎、山村聰、笠智衆、藤田進、黒沢年男、高橋悦史、久保明、佐藤充、島田正吾、平田昭彦、小林桂樹、加山雄三、天本英世
  殺人狂時代 東宝 秘密結社が送り込んだ殺し屋たちとワケも判らぬままに次々と対決する羽目になる大学講師、これがてんで冴えない男でヒーローとはほど遠い――と思いきや、彼も又、秘密結社首領と深い因縁を持つ、謎の男だった。首領を演じる天本英世の怪演(ゲル・ショッカー首領の原型だ)、彼が運営する精神病院の患者たちの気味悪さ、殺し屋たちの変人ぶり、など、それまでにも断片的に垣間見てえていた、岡本監督のグロテスク志向が丸ごと一本に結実。これも名画座での人気が高い、カルト・ムービーだ。
出演:仲代達矢、天本英世、団令子、砂塚秀夫、伊吹新、長谷川弘、二瓶正也、沢村いき雄、江原達怡、中山豊、樋浦勉、冨永美沙子
1968 肉弾 「肉弾」を
つくる会・
ATG
前作では抜け落ちた“下級兵士にとっての8・15”を描いた、自主製作作品。海に浮かぶ特攻用魚雷に縛りつけられたドラム缶の中で、やがて訪れるはずだった死をボンヤリ待ちながら、主人公は終戦を迎える。何という、バカバカしさ!この映画では、主人公が空腹を紛らわすために食べたものを咀嚼〈そしゃく〉したり、上等兵がバイブルを知らずに“性書”と間違えたりと、他作品にも増して、バカバカしいエピソードがつまっている。前作の辛辣な迫力とは正反対に、可笑しくて、やがて悲しき・・・。
出演:寺田農、大谷直子、笠智衆、北林谷栄、春川ますみ、天本英世、雷門ケン坊、田中邦衛、(語り)仲代達也 
1977 姿三四郎 東宝 山口百恵とのコンビで人気だった三浦友和のために、企画された。しかし、岡本喜八らしい匂いもプンプン。柔の道を極めるために戦った黒沢明版とは違って、この三四郎は意地と恋のために戦うのだ。
出演:三浦友和、仲代達矢、秋吉久美子
1978 ブルークリスマス 東宝 UFOを見た者の血が、青くなる。彼らは宇宙人の手先だと噂が世界を覆い、狂気の大虐殺が始まる・・・。日本では珍しいSFポリティカル・サスペンスで、冷たい空気が張りつめたようなムードが怖い。
出演:仲代達矢、勝野洋、竹下景子、岡田英二、八千草薫
  ダイナマイトどんどん 東宝 これからは民主主義の時代!と、昭和25年の暴力団が何と野球で一騎打ち。それでもやはり、試合は一人一殺の殺人野球へと発展してしまう。鉛を埋め込んだバット、鋲を尖らせたスパイク、小指がない手で投げる魔球。このムチャクチャな設定を、役者たちは本当に楽しそうに演じていて、この映画自体がゲームのようにも思える。結局は幻に過ぎなかった、戦後民主主義という“ゲーム”についての映画でもある。それを一時だけでも信じたヤクザたちの戸惑いを描いた、痛々しい異色活劇。
出演:菅原文太、比大路欣也、宮下順子、フランキー堺、岸田森、嵐寛寿郎、金子信雄、中谷一郎、石橋正次、丹古母鬼馬二、志賀勝、下馬二五七、藤岡琢也
1979 英霊たちの応援歌・
最後の早慶戦
テレビ東京 同じ野球の物語でも、こちらは特攻隊として出撃した早慶両大学の野球部員たちの青春映画、「今度は戦場で会おう」とライバルの肩を叩きあった彼らは、やがては、太平洋の藻屑として消えてしまった。
出演:永島敏行
1981 近頃なぜか
チャールストン
ATG 架空の独立国“ヤマタイ国”の閣僚と名乗る老人たちと少年との、陽気で不気味な共同生活。その後の、“独立愚連隊”は国までもを、独立させてしまう。国家の存在を意識しないことも又、批判されている。
出演:小沢栄太郎、本田博太郎
1986 ジャズ大名 大映 時は、幕末。大名が「いくさは、いやダ!」と、黒人漂流者トリオと地下牢に閉じこもってジャズ・ライブを開いてしまう!『ああ爆弾』を踏襲した邦楽ミュージカルから始まってジャズに雪崩込み、演奏を終えて地上に出てみると明治の世になっていたという展開は、戦争ではなく文化による新時代の幕開けを感じさせて清々しい。圧巻はラスト10数分の演奏シーンで、家来や女中が何10人もひしめきあい、邦楽器で黒人たちに対抗し、果てはミッキー・カーチスのエレキ・ギターや山下洋輔の子供用ピアノまで登場!
出演:
1991 大誘拐 喜八プロ・
ニチメン・
フジエイト
誘拐事件。大富豪のおばあちゃんをさらった。僕らは三人組「虹の童子(レインボー・キッズ)」おばあちゃんが名前を決めた。身代金はどうしよう。おばあちゃんが啖呵を切った。「キリよく百億。ピタ一文負からんで!」世界中のみんなが、ひっくり返った。「金満ニッポン」に、おばあちゃんがこっそり仕掛けたマネーゲーム。捜査は難航。今日も空には大きな虹がかかった。
出演:北林谷栄、緒形拳、風間トオル、内田勝康、西川弘志、樹木希林、神山繁、竜雷太、嶋田久作、橋本功、常田富士男、天本英世、本田博太郎、奥村公延、中谷一郎、上田耕一、岡本真美
1995 EAST MEETS WEST 松竹=FEATURE FILM ENTERPRISE=喜八プロ 岡本喜八がニューメキシコ州サンタフェで撮影を行った、痛快アクション・コメディ。日米修交使節団の護衛艦としてサンフランシスコに到着した咸臨丸には、開国を阻止するためにアメリカにやってきた刺客の健吉と、艦長護衛役の忍者の為二郎が乗り込んでいた。しかし船が着くやいなや、一行の秘密資金3千両が何者かに奪われてしまう。本来なら敵同士の健吉と為二郎がとりあえず3千両を奪還する目的で一致し、その行くへを追うことになるのだが・・・・・・。
出演:古谷一行、財津一郎、神崎愛、岡本真美、唐十郎、本田博太郎、ミッキー・カーチス