映画の楽しみ方は人それぞれ。これまで洋画ばかり観ていた私が昨年「大映映画おしゃれ手帖」の制作を機に、日本の古い映画に触れる機会に恵まれました。手に取った作品を順番に鑑賞しつつ、当時の服装を描いていくと次第にワクワク感がとまらなくなり、いつしか頭の中には祖母姉妹の姿が浮かんでいました。1950年代は空前の洋裁ブーム、まさに当時20代だった祖母も同じく、洋裁を習って自分の服と子供達の服を作っていた頃です。お洒落が好きだった祖母の妹は、東京の百貨店勤めでいち早く情報をキャッチできたこともあり、舶来の生地で仕立ててもらった服や小物を身に纏い、まだ子供だった母はそんな叔母の着る服に憧れて育ったと聞きました。昔の映画の衣装を見ていると、そんな祖母姉妹の若かりし時代に憧れてしまいます。もし私がこの時代を生きていたら、やはり憧れの映画スタアのスタイルを参考にして自分で生地を選び、同じような形に仕立ててもらい、更に生地違いも作ってもらったりして、可能な限り楽しんでいたと思います。
是非この機会に、おしゃれをして映画を観に来ていただけましたら幸いです。

永川梨惠(イラストレーター)

8月27日(日)〜9月2日(土)

有楽町で逢いましょう

1958年(S33)/大映東京/カラー/97分

『有楽町で逢いましょう』写真

©KADOKAWA 1958

■監督:島耕二/原作:宮崎博史/脚本:笠原良三/撮影:秋野友宏/美術:仲美喜雄/音楽:大森盛太郎
■出演:京マチ子、菅原謙二、川口浩、野添ひとみ、北原義郎、小野道子、品川隆二

百貨店で開催するファッションショー。今もあったら良いのになぁと思います。

フランス帰りの新進デザイナー女史と堅物建築技師、そしてそれぞれの弟妹という、二組の男女の恋のもつれが描かれる。今はなき有楽町そごうを絡めた小粋な風俗ドラマ。

9月3日(日)〜9日(土)

くちづけ

1957年(S32)/大映東京/白黒/74分

『くちづけ』写真

©KADOKAWA 1957

■監督:増村保造/原作:川口松太郎/脚本:舟橋和郎/撮影:小原譲治/美術:下河原友雄/音楽:塚原晢夫
■出演:川口浩、野添ひとみ、三益愛子、小沢栄太郎、見明凡太朗、村瀬幸子

素朴なシャツに膝下丈スカート、カゴバッグスタイルはまさに今。

拘置所の面会室で知りあった若い男女が、くちづけによって結ばれるまでの二日間。イタリア国立映画実験センター留学を経て増村保造が第一回作品として監督。

9月10日(日)〜16日(土)

1957年(S32)/大映東京/白黒/102分

『穴』写真

©KADOKAWA 1957

■監督:市川崑/脚本:久里子亭/撮影:小林節雄/美術:下河原友雄/音楽:芥川也寸志
■出演:京マチ子、船越英二、菅原謙二、川上康子、石井竜一、日高澄子、北林谷栄、山村聰

肩の開いたカットソーにタイトスカートスタイルがゴージャスで素敵です。

女性ルポライターが自作自演の失踪騒動をきっかけに、銀行の預金横領事件に巻きこまれていく——。ヒロイン京マチ子の七変化が楽しい! 市川崑の洒落た犯罪コメディ。

9月17日(日)〜23日(土)

巨人と玩具

1958年(S33)/大映東京/カラー/95分

『巨人と玩具』写真

©KADOKAWA 1958

■監督:増村保造/原作:開高健/脚本:白坂依志夫/撮影:村井博/美術:下河原友雄/音楽:塚原晢夫
■出演:川口浩、野添ひとみ、高松英郎、小野道子、伊藤雄之助、山茶花究、信欣三

虫歯だらけの小娘から売れっ子スタアになる野添ひとみ。後半のダンスにもご注目♪

製菓会社の敏腕宣伝課長とその部下が、街で拾った少女をキャンペーンガールに仕立てあげる——。巨大消費社会を痛烈に風刺した開高健の同名小説を映画化。

9月24日(日)〜30日(土)

たそがれの東京タワー

1959年(S34)/大映東京/白黒/63分

『たそがれの東京タワー』写真

©KADOKAWA 1959

■監督:阿部毅/脚本:星川清司/撮影:小林節雄/美術:山口熙/音楽:塚原晢夫
■出演:仁木多鶴子、小林勝彦、金田一敦子、三宅邦子、市田ひろみ、見明凡太朗、藤山浩一、田中三津子

10代の頃に背伸びをしておしゃれをする姿が微笑ましい。

天涯孤独のお針子が売り物のドレスをまとって夜の街へ。偶然出逢った青年との、身分を偽った恋の行方は——。完成したばかりの東京タワーを背景にした甘美哀愁篇。

10月1日(日)〜7日(土)

黒い十人の女

1961年(S36)/大映東京/白黒/102分

『黒い十人の女』写真

©KADOKAWA 1961

■監督:市川崑/脚本:和田夏十/撮影:小林節雄/美術:下河原友雄/音楽:芥川也寸志
■出演:山本富士子、岸惠子、船越英二、宮城まり子、中村玉緒、岸田今日子、倉田マユミ、永井智雄

個性の強い登場人物たちの中でも、岸惠子のスタイルがカッコ良い。

妻がありながら、九人の愛人を持つTVプロデューサー。やがて女たちは結束し、彼を殺害しようと企てる——。スタイリッシュなモノクロ映像、豪華女優陣などみどころ満載。

10月8日(日)〜14日(土)

ダンプ・ヒップ・バンプ くたばれ野郎ども

1969年(S44)/大映東京/カラー/83分

『ダンプ・ヒップ・バンプ くたばれ野郎ども』写真

©KADOKAWA 1969

■監督:帯盛迪彦/原作:森哲郎/脚本:高橋二三/撮影:喜多崎晃/美術:渡辺竹三郎/音楽:伊部晴美
■出演:南美川洋子、渥美マリ、津山由起子、八代順子、水木正子、森川信、山東昭子

60年代後半は若者のファッションパワー炸裂時代。若いって素晴らしい!

武道の達人ダンプ、頭脳明晰なヒップ、セクシー担当バンプの三人娘が、風紀を乱す娯楽センターに潜入、内部からの壊滅を図る——。大映フレッシュ女優陣の溌剌ミニスカルック!

10月15日(日)〜21日(土)

女体

1969年(S44)/大映東京/カラー/95分

『女体』写真

©KADOKAWA 1969

■監督・脚本:増村保造/脚本:池田一朗/撮影:小林節雄/美術:渡辺竹三郎/音楽:林光
■出演:浅丘ルリ子、岡田英次、伊藤孝雄、川津祐介、梓英子、岸田今日子、小沢栄太郎、北村和夫

まるでカラーチャートのような、浅丘ルリ子のカラフルな着こなしが楽しい。

激しく、美しく、狂おしく。魔性の女ミチの多彩な愛の遍歴と破滅。ルリ子を高く評価していた増村保造が、彼女を想定して、池田一朗とともにオリジナル脚本を執筆。

【書籍案内】

大映映画おしゃれ手帖

永川梨惠/著

ワイズ出版 定価2,200円(税込)

なぜ今まで、日本映画のファッションに特化した画集がなかったのか…不思議! 本書は主に1950〜60年代の大映映画を、イラストレーター・永川梨惠が鑑賞し、「可愛い!」「ステキ!」と思ったポイントを描き下ろしたシネマコラム集です。

■料金(当日)

一般…1,300円 / シニア・学生…1,100円 / 会員…900円
※水曜サービスデー…1,100円均一

■インフォメーション

  • 各回定員入れ替え制
  • 午前10時より当日の全回分の整理番号付き入場券を発売します。定員48名になり次第、締め切らせていただきます。
  • 混雑状況により、販売開始時刻を早める場合がございます。
  • 上映開始後10分を過ぎてのご入場はお断りさせていただきます。
  • 作品により画像、音声が必ずしも良好でない場合がございます。あらかじめご了承下さい。

Illustration:Rie Nagakawa