4月28日(日)〜5月4日(土)

坊っちゃん

1977年(S52)/松竹、文学座/カラー/92分

『坊っちゃん』写真

©1977 松竹株式会社

■原作:夏目漱石/脚本:前田陽一、南部英夫/撮影:竹村博/美術:梅田千代夫/音楽:佐藤勝
■出演:中村雅俊、松坂慶子、大滝秀治、荒木道子、米倉斉加年

数多く作られた『坊っちゃん』映画の今のところ、これが最終作。山嵐との男の友情が強調されている。無理やり転勤させられるうらなりがボソボソ唄う鉄道唱歌。マドンナから感謝の言葉を告げられ、フクザツな表情の赤シャツ。前田独特のタッチが随所に。

4月28日(日)〜5月4日(土)

喜劇 昨日の敵は今日も敵

1971年(S46)/渡辺プロダクション/カラー/85分

『喜劇 昨日の敵は今日も敵』写真

©TOHO CO.,LTD.

■脚本:石松愛弘、前田陽一/潤色:鴨下信一/撮影:梁井潤/美術:樋口幸男/音楽:山本直純
■出演:堺正章、いかりや長介、なべおさみ、吉沢京子、范文雀、紀比呂子

東宝二作目。箱根小涌園タイアップ映画。大学応援団と軟派学生の対立に女子大空手部が絡んでのドタバタは脱力。が、箱根独立を企てる策士が登場した途端、映画が活気づく。制約を逆手にとった前田喜劇の逞しさ。知性派俳優平田昭彦の怪演に驚愕!

5月1日(水)〜7日(火)

喜劇 男の子守唄

1972年(S47)/松竹/カラー/88分

『喜劇 男の子守唄』写真

©1972 松竹株式会社

■脚本:田坂啓、満友敬司、前田陽一/撮影:竹村博/美術:佐藤公信/音楽:山本直純
■出演:フランキー堺、倍賞美津子、生田悦子、ミヤコ蝶々、京唄子、森川信

高度経済成長下の東京の風景に、終戦直後に流行した『東京ブギウギ』が鳴り響く。何もかも消滅した焼け跡風景に焦がれた前田の心情が反映され、戦後日本への批評ともなっている。孤児を拾って育てるちんどん屋のお話は、城戸社長好みの人情味。

5月1日(水)〜7日(火)

喜劇 冠婚葬祭入門

1970年(S45)/松竹/カラー/87分

『喜劇 冠婚葬祭入門』写真

©1970 松竹株式会社

■原作:塩月弥栄子/脚本:宮川一郎、前田陽一/撮影:荒野諒一/美術:芳野尹孝/音楽:木下忠司
■出演:三木のり平、倍賞美津子、ちあきなおみ、由利徹、森光子

塩月弥栄子のベストセラー・ノウハウ本の映画化。定年間際の冴えない社員が会社の冠婚葬祭になると張り切りだす。この男がお年頃の娘と二人暮らしというのは松竹家庭劇の定番。葬式と結婚式が同日同時刻に開催、参列者が右往左往の大混乱の場が抱腹。

5月5日(日)〜11日(土)

三億円をつかまえろ

1975年(S50)/松竹/カラー/92分

『三億円をつかまえろ』写真

©1975 松竹株式会社

■脚本:菊島隆三/撮影:丸山恵司/美術:佐藤公信/音楽:山本直純
■出演:有島一郎、長門勇、谷村昌彦、渡辺篤史、伊佐山ひろ子、財津一郎、由利徹、三木のり平

三億円事件時効成立の話題に乗ったドロボー喜劇。例によってショボくれたおっさんたちが団結。農協の大金庫を狙う。赤ん坊同伴というのが笑いと緊張を生んでいる。大御所菊島隆三脚本はガッチリ。その隙間を抜って、のり平・財津の怪演が場面を盗む。

5月5日(日)〜11日(土)

喜劇 家族同盟

1983年(S58)/松竹/カラー/87分

『喜劇 家族同盟』写真

©1983 松竹株式会社

■脚本:中島丈博/撮影:長沼六男/美術:芳野尹孝/音楽:田辺信一
■出演:中村雅俊、中原理恵、川谷拓三、中尾ミエ、佐藤B作、平田満、ミヤコ蝶々、有島一郎

『万引き家族』に先駆けた、血の通わぬ者同士の家庭劇。とはいえ、中島丈博の脚本には屈折した味わいが。当時、TVで人情味溢れる好人物を連投していた川谷拓三が、東映実録路線時代に戻ったように暴れまくる。前田作品としては異色の肌ざわり。

5月8日(水)〜14日(火)

喜劇 日本列島震度0

1973年(S48)/松竹/カラー/90分

『喜劇 日本列島震度0』写真

©1973 松竹株式会社

■脚本:前田陽一、南部英夫、吉田剛/撮影:竹村博/美術:芳野尹孝
■出演:フランキー堺、石橋正次、鳥居恵子、日色ともゑ、谷村昌彦、三遊亭圓右、財津一郎

『日本沈没』に対抗して作られたパニック(?)喜劇。普段は地味だが防災訓練になると張り切るフランキーはもはや前田映画の定番。今回は占い師・日色とのロマンス模様も。運命の日前夜に、灰田勝彦(本人登場!)が歌う『東京の屋根の下』が沁みる。

5月8日(水)〜14日(火)

新唐獅子株式会社

1999年(H11)/GAGA PICTURES/カラー/91分

『新唐獅子株式会社』写真

©1998 GAGA communications inc

■協力監督:南部英夫、長濱英高/原作:小林信彦/脚本:前田陽一、北里宇一郎/撮影:満井坦彦/音楽:尾形真一郎
■出演:赤井英和、つみきみほ、永島敏行、麿赤兒

小林信彦のヤクザ・パロディ小説を自由に脚色。この映画の撮影中に監督は肝不全で死去。前田を敬愛する南部英夫・長濱英高が遺志を引き継ぎ完成させた。八百長に加担したせいで、人生ががらりと変わった元野球選手に前田は自分の想いを込めている。

5月12日(日)〜18日(土)

喜劇 大誘拐

1976年(S51)/松竹/カラー/90分

『喜劇 大誘拐』写真

©1976 松竹株式会社

■原案:吉田進/脚本:瀬川昌治、永井素夫、前田陽一/撮影:吉川憲一/美術:熊谷正雄/音楽:いずみたく
■出演:森田健作、ミヤコ蝶々、夏純子、岸部シロー

誘拐されたお婆ちゃんが犯人たちと共謀して身代金をせしめる。という基本設定は天藤真の同題小説、その映画化の岡本喜八作品と類似。が、小説よりこちらは二年早い。ダメ男たちの誘拐団の名称は、当時大ヒットのあの歌を。喜八版と見比べるのも一興。

5月12日(日)〜18日(土)

神様のくれた赤ん坊

1979年(S54)/松竹/カラー/91分

『神様のくれた赤ん坊』写真

©1979 松竹株式会社

■脚本:前田陽一、南部英夫、荒井晴彦/撮影:坂本典隆/美術:森田郷平/音楽:田辺信一
■出演:桃井かおり、渡瀬恒彦、吉行和子、嵐寛寿郎、曽我廼家明蝶

『集金旅行』のリメイク。身寄りのなくなった男の子の慰謝料を集めるという基本線は同じだが、父親探し、それに桃井のルーツ探しの要素も加えて、秀逸なロード・ムービーに。渡瀬、桃井、荒井脚本と、新しい顔ぶれが前田映画を刺激。後期の代表作。

text by 北里宇一郎(脚本家)

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