ゆきてかえらぬ 渡辺護 官能の映画旅

■ 作品解説 /

※併映作品はすべてDVD上映です。

9月20日(火)〜26日(月)

谷ナオミ 縛る!

1977年(S52)/新東宝/カラー/60分

『谷ナオミ 縛る!』写真

■脚本:高橋伴明/撮影:柳田友春
■出演:谷ナオミ、下元史朗、鶴岡八郎

奈美子は、生きた女の顔を求めて女中たちを縛る能面師の夫・敬一郎のあり方に耐えていた。だが、義弟の良介が自分に思いを寄せるあまり、納得の行く能面が打てず苦悩していることを知り……。谷ナオミで拷問ものをという注文を渡辺は拒否。「変態映画は嫌だった。権力とかに縛られる女って解釈で、縄はベッドシーンの小道具として考えようと」。この作品のヒットで渡辺は緊縛ものを量産するようになる。

★「渡辺護が語る自作解説 緊縛ものを撮る(一)」併映

9月27日(火)〜29日(木)

少女縄化粧

1979年(S54)/新東宝/カラー/62分    ○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

『少女縄化粧』写真

■脚本:高橋伴明、渡辺護/撮影:鈴木史郎
■出演:日野繭子、岡尚美、下元史朗、野上正義

『あばずれ』の緊縛時代劇版リメイク。篠は父を死に追いやった義母への復讐を誓って巡礼の旅に出る。渡辺の狙いはさすらう少女を撮ることにあったが、彼以上に撮影の鈴木史郎が凝った画を撮ろうとしたため、製作費は大幅に超過。だが、冥界にまで下りて亡父に会うような美しいシーンが生まれた。「赤字出してひどい目にあったけど、ああ、こうやって撮ってよかったと思う」。ズームアップ映画祭第一回作品賞。

★「渡辺護が語る自作解説 緊縛ものを撮る(二)」併映

9月30日(金)〜10月6日(木)

婦女暴行事件 不起訴

1979年(S54)/国映/カラー/61分

『婦女暴行事件 不起訴』写真

■脚本:小水一男/撮影:久我剛
■出演:日野繭子、青野梨麻、港まゆみ、大杉漣

ドキュメントタッチの隠れた傑作。横須賀の荒涼とした風景の中、暇を持て余した三人組の若者が次々と女たちを誘い、輪姦に持ち込んでいく。「雨にたたられてね、大変な撮影だった。でも、役者もスタッフものりにのって撮ったんだよ」。事後の被害者女性のあり方を丁寧に描き分ける演出に注目。女優一人一人に印象に残る見せ場を作っている。刑事役で渡辺も出演。併映は浅草ロケの不良少女もので日野繭子主演。

★「非行女子学生 濡れはじめ(8mm短縮版)」併映

10月7日(金)〜14日(金)

変態SEX 私とろけるニュープリント

1980年(S55)/現代映像企画/カラー/66分

『変態SEX 私とろける』写真

©日活

■脚本:渡辺護、吉田義昭/撮影:久我剛
■出演:夏麗子、杉佳代子、佐野和宏、津崎公平

『あばずれ』の脚本を一部カットしたリメイク作品。8月20日の大阪日日新聞に撮影現場ルポが載った。渡辺は「ことしはこれが9本目」。撮影時間の限られたミナミのラブホテルでリハーサルを入念にくりかえしたあと、撮影。「安かろう悪かろうにはしたくない。ぼくにも監督としての意地がある。低予算の不自由な条件のなかで、やればやれることをみせるつもり」。今回の特集のためにニュープリントを上映。

10月15日(土)〜21日(金)

産婦人科 人妻異常体験

1984年(S59)/国映/カラー/61分 ※16mm

『産婦人科 人妻異常体験』写真

■脚本:渡辺護/撮影:志村敏雄
■出演:織本かおる、田口和正、山本あゆみ、宇治絵美

兼人は精子減少症で子どもができないのをいいことに雅代と浮気。雅代の彼氏が描いた春画を買った兼人は驚く。この絵のモデルは妻の信子? 荒井晴彦脚本の『女の診察 舌と唇』(80)のリメイク。「撮ったことを忘れていた作品だったけど、観直したら、あれくらいきっちり演出出来てるのは無いっていうくらいの出来だったよな」。『色道四十八手 たからぶね』のヒントとなったスワッピングコメディ。

10月22日(土)〜28日(金)

片目だけの恋

2004年(H16)/ユーロスペース/カラー/88分 ※DVCAM

『片目だけの恋』写真

©2004ユーロスペース

■脚本:井川耕一郎/撮影:鈴木史郎
■出演:小田切理紗、田谷淳、里見瑶子、下元史朗

17才のユカには9才の頃から心に秘めた人がいた。従姉妹の理恵子の夫・井上。井上たちが近所に引っ越してきたのをきっかけにユカの思いは止められなくなってくる。「“少女”はおれにとって昔から大切なテーマでね、おっかないくらい一途な少女の恋を描きたかったんだ。だけど、主人公にふさわしい子がなかなか見つからなかった」。小田切理紗に出会った渡辺はのめりこむように演出。少女ものの最後の作品。

10月29日(土)〜11月4日(金)

喪服の未亡人 ほしいの…

2008年(H20)/国映、新東宝/カラー/61分

『喪服の未亡人 ほしいの…』写真

■脚本:井川耕一郎/撮影:清水正二
■出演:淡島小鞠、岡田智宏、倖田李梨、結城リナ

渡辺護の遺作。遺品整理をしていたいずみは夫の不倫を疑う。「殺してやる!もう死んでるけれど」。死者に復讐しようとする女の悲喜劇。「おれはこれからのピンクはこれでどうだ!って気持ちで撮った。ピンク映画の新しい基準をつくるつもりで撮ったわけです」。併映は渡辺護版『夜の蝶』。谷ナオミ、東てる美ダブル主演で、夜の新宿に生きる女たちの争いを描いたもの。鏡を使った凝った画作りが興味深い。

★「花の女王蜂性競乱(8mm短縮版)」併映

11月5日(土)〜11日(金)

色道四十八手 たからぶね

2014年(H26)/PGぴんくりんく/カラー/71分

『色道四十八手 たからぶね』写真

■企画・原案:渡辺護/監督・脚本:井川耕一郎/撮影:清水正二
■出演:愛田奈々、岡田智宏、なかみつせいじ、佐々木麻由子

新婚の一夫は妻の千春が数年前から叔父の健次と不倫していたことを知り、ショックを受ける。「復讐しよう!」と訴える叔母の敏子。でも、一体どうやって? 春画や四十八手という日本的な題材を使ったスワッピングコメディ。渡辺は「絶対に面白い映画にする!」を宣言して準備に入ったが、がんで亡くなる。脚本の井川が代わって監督。ニッポン・コネクション2015ニッポン・ヴィジョンズ審査員特別賞。

11月12日(土)〜14日(月)

紅蓮華

1993年(H5)/三協映画/カラー/119分  ○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

『紅蓮華』写真

■脚本:沖島勲、佐伯俊道/撮影:鈴木史郎
■出演:秋吉久美子、役所広司、武田久美子

戦後、未亡人のさくらは自分の意思で生きることを決意、建造を再婚相手に選ぶ。だが、建造には別れを拒む恋人がいて……。ある女社長の自伝の映画化だが、実質的な主役は太宰治のように破滅に向かっていく夫・建造。渡辺は建造役に周囲の反対を押し切ってTVドラマで活躍していた役所広司を起用。役所は渡辺の期待に見事に応えた。「おれ、泣けてきたもんね。いい芝居するんだよ」。渡辺護の代表作の一つ。

text by 井川耕一郎

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