![]() Photo by Yevgeny TARAN, © 2000 ![]() Photo by Yevgeny TARAN, © 2000 |
アレクサンドル・ソクーロフの新作《牡牛座》 最新作《牡牛座》は、《モレク神》につぐ、監督が目指す歴史4部作の第2弾である。 モスクワ近郊の村で療養しているレーニン(レーニンはペンネーム。シベリア流刑され、シベリアの大河レナからペンネームを作ったと言われる。本名は、ウラジーミル・イリイッチ・ウリヤーノフ、1870−1924)は、やがて権力を掌握したスターリン(スターリンは鋼鉄を意味するペンネーム。本名はヨシフ・ヴィッサリオーノヴィチ・ジュガシヴィリ、1879−1953)に閉じ込められ、モスクワと、すなわちソ連共産党中央書記局とも断絶される状況に置かれる。また医師、秘書など療養先の館の勤務員もすべてスターリンの手先とさせられた。 この歴史的事実を踏まえて、監督は、まだらボケが始まった晩年のレーニンを、妻に付き添われた一人の人間として描く。登場人物は主人公のレーニンをはじめ、レーニンの妻であり同志でもある教育学者クループスカヤ、やはりともに歩んだレーニンの妹マリーヤ、スターリンなど、歴史上の人物を彷彿とさせるが、純粋なドキュメンタリーではない。ソクーロフのまなざしを通したレーニン像は、再現というよりはイメージ化されており、ソクーロフの完全な劇映画である。 歴史4部作の3部に共通するのは、20世紀に権力の座に就いていた人びと、そしてその権力の凋落であるが、レーニンに関しては、「志を果たすことができなかった悲劇の人として、この人物を把握している点で、先のヒトラーとは大いに異なる作品になるだろう」と、ソクーロフは99年、カンヌ映画祭会場で著者に語った。ドイツでは、「あまりにもロシアのテーマなので」と制作への出資を断った。それは、極めて短絡的な考え方であろう。日本では、《モレク神》に引き続き、(株)ふゅーじょんぷろだくと、の才谷遼氏が共同プロデューサーとして出資している。当時まだ存在したロシア映画省も、文化省とともに制作に参画した。 (解説・児島宏子/井上徹) |