![]() Photo by Yevgeny TARAN, © 2000 ![]() Photo by Yevgeny TARAN, © 2000 |
ストーリー 舞台はモスクワ南東35キロに位置するゴールキ村。1917年の10月革命まで、ここにはモスクワ特別市長(首都や重要港市に置かれた県知事待遇の役職)レインボトの別荘があった。レーニンは1918年8月30日に狙撃され健康を害していた。その療養を兼ねて、18年9月25日から、休暇をここで過ごすようになり、1923年5月15日から24年に亡くなるまではここに定住した。 ソクーロフは、レーニンが、自分の病気の診断結果“消耗によるアテローム性動脈硬化”にたいし、「奇妙で理解できない」と語ったと言われている、つまり、理性を完全には失っていない22年夏の一日を描いている。レーニンは52歳だった。 6本の白い円柱で飾られる瀟洒な邸宅に病人は暮らす。ここにはモスクワから手紙も届かず、電話もかかってこない。革命の指導者は、あらゆることから、外界から隔離されている。隣室では、護衛局長のパーコリが病人宛の手紙を検閲し暖炉で燃やし処分している。別の隣室には、病人の妻と妹が不安気に館の様子をうかがっている。ドイツ人の医者が定期的に診察をする。病人の秘書である女性は不可解な振る舞いをし、なぜか陽気に笑っている。館全体を覆う不可解な雰囲気。右半身が麻痺している病人は入浴も着替えもままならない。孤立させられていることを感知し、自由にならない身に苛立つ病人。痙攣の発作も起こす。まだらボケも始まっている。革命の火中の人は、今や信じられないような境遇に陥っている。「いつになったら快復するのか」と問う病人に医師は「17×22(17年と、背景となった22年を意味するのか?)の答えができたとき快復する」と告げる。その答えを出そうと苦悩する病人。(後に夢に現れた病人の母が、掛け算をしなくてもよい、17を22回足せばよい、と教える。) 病人と妻は午後に森へピクニック、狩に出る。倒れた大木が道を塞ぎ、車は通れない。倒木を退かす運転手。それを注意深く見守る病人。ロシアの豊かな自然に取り囲まれ、草原で妻と二人で横たわり、語り合い見詰め合う二人… やがてモスクワから客人がやって来る。空虚な黒い目の、小悪魔を思わせる風貌の男。意味もなく苛立っているようだ。一体何のためにやって来たのか、よく分からない。二人の対話。なぜ手紙が来ないのか、電話が通じないのか問いただす病人。自殺用の毒薬を所望したが、どうなったのか問い詰める病人。事実を織り込んだ対話。党書記局(中央委員会)からの贈り物、杖を病人に渡す。大木が倒れて邪魔をするとき、二つの解決法―大木をどかす、遠回りをする―を披露する病人。客人は、第三の手法―大木を切り刻む―を明かす… 昼食時。病人は客人の名前が思い出せない。妻が、その名を病人の耳元でささやく。驚く病人。「なんと厳しい名前… みんな(党書記局・中央委員会メンバー、そのペンネーム)厳しい名前だ! カーメネフ(石)、ルイコフ(咆哮)、モロトフ(ハンマー)…彼らは誰を脅かしたいのだろう?…」 妻と病人は庭のあずまやに。妻は電話に呼び出され館にかけて行く。一人取り残された病人。妻を呼ぶ病人の叫び… まったく孤独な姿… それは果たされなかった理想、夢を象徴しているのだろうか? 孤独のままに置かれながら、死ぬことも許されないように、新しい権力者に、その名を利用されることの予兆であろうか? 歴史的な制約があり、仮定は許されないものの、ソクーロフは、どんなに辛くても、後退しても、人びとが自ら求め理解し選択するような社会の到来を夢見ている。そのために、できる限りのことを、こつこつと行う以外にないとも。
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