映画探偵の映画たち 失われ探し当てられた名作・怪作・珍作

■ 作品解説 / /

※適正映写速度が作品によって異なるサイレントフィルムに関して、当館では映写機の仕様上、24fpsでの上映となります。
あらかじめご了承下さい。以下に記載の上映時間も映写速度24fpsの場合です。

1月13日(水) 〜16日(土) 、20日(水) 〜23日(土)

何が彼女をそうさせたか

1930年(S5)/帝国キネマ/白黒/サイレント/78分 ※サウンド版

『何が彼女をそうさせたか』写真

写真提供:復元版製作委員会

■監督・脚本:鈴木重吉/原作:藤森成吉/撮影:塚越成治
■出演:高津慶子、藤間林太郎、小島洋々、牧英勝、濱田格

大阪で一時代を築いたもののスタジオが焼失、残存フィルムがほとんどない帝キネの代表作。創業者・山川吉太郎の孫である暉雄が、執念でロシアのゴス・フィルモフォンドより見つけ出し、太田教授の手で復元された。波乱に満ちた捜索の顛末も、映画に負けない手に汗握る面白さだ。上映機会は極めて少なく、今回の目玉作品のひとつといえる。

1月17日(日) 〜19日(火)

播州皿屋敷

1929年(S4)/賀古プロダクション/白黒/サイレント/6分 ◯東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

■監督:賀古残夢/撮影:田中十三 ■出演:松井莊輔、清水林之輔、片岡紅三郎、筑紫かず子、市川市昇

東大阪の伝説のコレクター・安部善重氏の没後、フィルムセンターの調査が行われた。本人が大言壮語していたような歴史上の名作は発見されなかったものの、意外な珍作・怪作が発掘されている。これは、創成期の巨匠・賀古残夢の知られざる短編作品で、皿屋敷怪談が、わずか6分の超高速で語られる。安っぽいがどこか憎めない、愛すべき珍品。

1月17日(日) 〜19日(火)

武士道 BUSHIDO:DAS EISERNE GESETZ

1925年(T14)/東亜等持院/白黒/サイレント/62分 ◯東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

『武士道 BUSHIDO:DAS EISERNE GESETZ』写真

■監督:ハインツ・カール・ハイラント、賀古残夢/脚本:長野健太
■出演:明石潮、岡島艶子、カール・テティンク、ロー・ホール

こちらは賀古残夢が手掛けた、日本初の国際合作映画。とはいってもほぼドイツ主導の秘境冒険もので、無理やりハラキリ・フジヤマ・ゲイシャが登場する。ゴスで発見されドイツを経由して日本に連絡が届いた。まさに怪作だが、西洋式の城攻めをするサムライなど見どころは満載、ワイマール期ドイツ映画の端正さはむしろ存分に味わえる。

1月17日(日) 〜19日(火)

吉良の仁吉

1937年(S12)/今井映畫/白黒/5分    ◯東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

■監督:児井英男/脚本:小鍛冶泰祐/撮影:平野好美 ■出演:海江田讓二、月宮乙女、鬼頭善一郎、上田吉二郎

ゴスで発見された映画には、実はなぜか断片が多い。その中でも極め付きの珍品で、ほとんど現存のない今井映画。わずか5分の断片で、往年の名コレクター・御園京平氏が、瞬時に題名を言い当ててしまった逸話で、名のみ高かった作品だ。もちろん上映歴はない。実物を見て、御園氏のすごさを実感してほしい。あなたに同じことができるだろうか?

1月17日(日) 〜19日(火)

電車が軌道を走る迄

1929年(S4)/白黒/サイレント/9分    ◯東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

『電車が軌道を走る迄』写真

■製作:荻野茂二

現存最古のSF映画「百年後の或る日」や前衛映画で知られるようになった個人映画作家・荻野茂二は、戦後まで長く自主映画活動を続け、いくつもの顔を持つ。今回は、ドキュメンタリストとしての荻野の端正な一面を紹介する。それらは歴史的にも貴重な資料と言えるだろう。遺贈された荻野作品は膨大で、研究はまだ始まったばかりだ。

1月17日(日) 〜19日(火)

曼珠沙華

1945年(S20)/カラー/サイレント/8分  ◯東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

■製作:柿本久夫

フィルムセンターには、背景や価値がよくわからないまま眠っている作品が沢山ある。これもそんな一本で、1945年9月製作のカラー映画というところに興味を抱いて閲覧した結果、奈良の個人映画作家・柿本久夫の幻想映画と判明した。完成度は高く、興味は尽きない。敗戦直後の曼珠沙華という題材は、幻想美の田園風景の中に死を感じさせる。

1月24日(日) 〜30日(土)

剣劇女優とストリッパー

1953年(S28)/新大都映画/白黒/26分

『剣劇女優とストリッパー』写真

写真提供:プラネット映画資料図書館

■監督:平澤譲二/撮影:富澤恒夫
■出演:大都あけみ、奥山紗代、三島百合子、空飛小助、キャロル都

フィルムセンターとは別の視点から1万5千本もの映画を集めてしまったプラネット・安井喜雄氏のコレクションには、興味深い作品がいくつも存在する。これは戦後のキワモノ作品だが、弁士の語りに乗せて、チャンバラ・パロディ風のサウンド映画に仕立てているのが興味深い。タイトルで中身を語り切る潔さも、逆にすがすがしい。

1月24日(日) 〜30日(土)

鐵の爪 花嫁掠奪篇 完結篇

1935年(S10)/エトナ映画社/白黒/45分 ※16mm

『鐵の爪 花嫁掠奪篇 完結篇』写真

写真提供:マツダ映画社

■監督:後藤岱山/原作・脚本:野村雅延/撮影:田中十三
■出演:椿三四郎、水原洋一、白川小夜子、中山介二郎、辻峰子

かつてマキノ映画が活動した御室撮影所を舞台に、1934年9月から1935年4月まで、わずか半年間だけ活動したエトナ映画。その間製作した全九本のうち、現存するのはわずかこの一本のみ(より正確にはニ本の総集編)。立命館大が発掘したエトナのメイキングフィルム(次項)とともに上映し、忘れられたスタジオの再検証を試みる。

1月24日(日) 〜30日(土)

エトナスタジオ

1934-35年(S9-10)/白黒/サイレント/2分 ◯立命館大学アート・リサーチセンター所蔵作品

text by 高槻真樹

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