成瀬巳喜男 その、まなざし 2/29-4/24


スケジュール
作品解説1
作品解説3
作品解説4

ラピュタ阿佐ヶ谷




作品解説2

おかあさんくちづけ稲妻妻よ薔薇のやうにあにいもうと娘・妻・母妻の心はたらく一家
おかあさん
(c) 東宝
3.10[水]ー16[火]
おかあさん
1952年/新東宝/白黒/98分
■製作:永島一朗/脚本:水木洋子/撮影:鈴木博美術:加藤雅俊/音楽:斎藤一郎 ■出演:田中絹代、香川京子、三島雅夫、中北千枝子榎並啓子、片山明彦、岡田英次、加東大介
庶民の日常を描いて本領発揮
全国の小学生から募集した作文から着想を得て水木洋子が脚色。下町に暮らす一家が父親を病気で亡くし、様々な不幸にあいながらも、母を中心に健気に生きる姿を描いたホームドラマ。最高作との呼び声も高い。

くちづけ
(c) 東宝
3.14[日]ー20[土]
くちづけ
1955年/東宝/白黒/115分
■製作:藤本真澄、成瀬巳喜男/脚本:松山善三 【第一話 くちづけ】監督:筧正典 【第二話 霧の中の少女】監督:鈴木英夫 【第三話 女同士】監督:成瀬巳喜男■出演:上原謙高峰秀子
力を抜いて楽しめる 愛すべき小品佳作
石坂洋次郎の三つの短篇小説を、三人の監督が同一スタッフで分担演出したオムニバス映画。成瀬は第三話「女同士」を担当。手慣れた夫婦劇にコミカルな味を加えて、短篇だけに余裕綽々の名人芸を満喫させる。

稲妻
(c) 大映
3.14[日]ー20[土]
稲妻
1952年/大映東京/白黒/93分/16mm
■脚本:田中澄江/原作:林芙美子/撮影:峰重義美術:仲美喜雄/音楽:斎藤一郎 ■出演:高峰秀子、三浦光子、村田知英子、植村謙二郎、香川京子、根上淳、小沢栄、中北千枝子
母娘ならんで歩くしあわせ 後味最高の傑作
四人の子の父が皆違うという母子家庭の物語。エゴイストの長女、自主性のない次女、情けない長男など、そんな家族から脱出を試みる末娘の視点で一家を描く。何でもない日常生活の描写、繊細な物語を堪能したい。

妻よ薔薇のやうに
(c) 東宝
3.17[水]ー23[火]
妻よ薔薇のやうに
1935年/P.C.L./白黒/74分
■脚本:成瀬巳喜男/原作:中野実/撮影:鈴木博/美術:久保一雄/音楽:伊藤昇 ■出演:千葉早智子、丸山定夫、英百合子、伊藤智子堀越節子、藤原釜足、細川ちか子
戦前のキャリア 第二のピーク
砂金探しに出たまま家を捨てた男、男に逃げられた女流歌人の妻、献身的な愛を与える妾という三者三様の立場を、娘の目を通して描く家族劇。 各人の微妙な心の揺れを、繊細かつ緻密に表現。当時、トーキー映画の最高到達点と評された。

あにいもうと
(c) 大映
3.17[水]ー23[火]
あにいもうと
1953年/大映東京/白黒/87分/16mm
■脚本:水木洋子/原作:室生犀星/撮影:峰重義美術:仲美喜雄/音楽:斎藤一郎 ■出演:京マチ子、森雅之久我美子、堀雄二、船越英二、山本礼三郎、浦辺粂子潮万太郎
情緒をつかんでいく演出はまさに名人芸の域
粗っぽい性格だが妹への愛は人一倍の兄と、子どもを宿して帰ってきた妹との深い兄妹愛の世界を描いた作品。室生犀星往年の名作再映画化。成瀬の全盛期に撮られた傑作で、彼にとっては最後の大映作品でもある。

娘・妻・母
(c) 東宝
3.21[日]ー27[土]
娘・妻・母
1960年/東宝/カラー/123分
■製作:藤本真澄/脚本:井手俊郎、松山善三/撮影:安本淳/美術:中古智/音楽:斎藤一郎 ■出演:三益愛子、原節子森雅之、高峰秀子、宝田明団令子、草笛光子、小泉博淡路恵子
この年は四本も発表する活躍ぶり
東宝の第一線の女優たちを一堂に集めた豪華版ホームドラマ。山の手の中産階級の一家が、金銭面の問題から家族の間に亀裂を生んでゆく様を、オールスターで描く。人気女優の顔見世映画として興行的には大成功だった。

妻の心
(c) 東宝
3.21[日]ー27[土]
妻の心
1956年/東宝/白黒/98分
■製作:藤本真澄、金子正且/脚本:井手俊郎/撮影:玉井正夫/美術:中古智音楽:斎藤一郎 ■出演:高峰秀子、小林桂樹、千秋実、中北千枝子三好栄子、根岸明美、田中春男
夫婦ものに 家族劇としての厚味も
井手俊郎のオリジナル・シナリオによる夫婦もの。東京に薄れつつあった下町的環境を地方都市に求め、夫婦愛の機微を描き出そうという野心作。一家に転がり込む兄夫婦に生々しい存在感があり、この作品に大家族劇としての厚味を加えた。

はたらく一家
(c) 東宝
3.24[水]ー30[火]
はたらく一家
1939年/東宝映画/白黒/65分
■製作:武山政信/脚本:成瀬巳喜男/原作:徳永直/撮影:鈴木博/美術:松山崇/音楽:太田忠 ■出演:徳川夢声、本間教子、生方明、伊東薫、南青吉、平田武、阪東精一郎、若葉喜世子
成瀬自身も気にいっていたという一本
働けど働けど暮らしが楽にならない一家を描く。実際に働く場面は出てこないが、冷徹な眼で家族の心の動きをとらえたきめ細やかな描写により成功している。成瀬にとってはかつて体験した現実に近く、気持ちよく撮れた作品と自評している。