8月27日(水)〜30日(土)

忍術千一夜

1939年(S14)/大都映画/白黒/無声/50分 ※16mmサウンド版

『忍術千一夜』写真

写真提供:プラネット映画資料図書館

■監督:大伴龍三/脚本:三品文雄/撮影:金森利之
■出演:近衛十四郎、水川八重子、クモイ・サブロー、大岡怪童、高原富士子

大都で大量に作られた忍術映画の代表的な一本。軽妙なパロディ要素を取り入れ、独自の魅力を確立した。落ちていた巻物を拾えば誰でも忍術を使える! という、あっけらかんとした朗らかさは、大手スタジオのシリアスな剣戟と一線を画した。特撮的には素朴そのものだが、近衛十四郎の軽快な刀さばきが大いに画面を盛り上げてくれる。

8月31日(日)〜9月2日(火)

争闘阿修羅街

1938年(S13)/大都映画/白黒/無声/36分 ※16mm

『争闘阿修羅街』写真

写真提供:マツダ映画社

■監督:八代毅/原作・脚本:吉村操/撮影:下村晴夫
■出演:ハヤブサ・ヒデト、大河百々代、大岡怪童、高村栄一、松村光夫

大都の現代劇を代表するアクションスター、ハヤブサ・ヒデトの戦前ほぼ唯一の残存作品。正義の新聞記者が、新型機の設計図を巡り悪の組織と争奪戦を繰り広げる。スタントマンの代役を使わず、主演俳優自らの曲芸師さながらのアクションが売りだった。科学要素や追っかけアクションは「怪電波の戦慄」の原型といえるもので、比較してみるのも面白い。

8月31日(日)〜9月2日(火)

モダン怪談 100,000,000円

1929年(S4)/松竹蒲田/白黒/無声/11分 ○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

『モダン怪談 100,000,000円』写真

■監督:斎藤寅次郎/原作:大森文雄/脚本:池田忠雄/撮影:武富善雄
■出演:斎藤達雄、松井潤子、坂本武、吉川満子、小倉繁

ノンセンス喜劇の巨匠・斎藤寅次郎サイレント期の貴重な一作。親に認められない恋をしたカップルが赤城山で心中を図るが、なぜか大量に出現した幽霊・妖怪に追いかけられる羽目に陥る。全編矢継ぎ早な奇想の連続で、自由すぎる展開は限りなくSFに近づいている。公開当時の三分の一弱に縮められた短縮版だが、おもしろさは十分に伝わる。

8月31日(日)〜9月2日(火)

石川五右ヱ門の法事

1930年(S5)/松竹蒲田/白黒/無声/14分 ○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

『石川五右ヱ門の法事』写真

■監督:斎藤寅次郎/原作:絹川秀治/脚本:池田忠雄、伏見晃/撮影:武富善雄
■出演:渡辺篤、横尾泥海男、青木富夫、坂本武、香取千代子

石川五右衛門の子孫にあたる石川吾郎はさえない古道具屋の主人。恋人との結婚もかなわず死んでしまった吾郎は、石川五右衛門本人の霊から「助けてやろう」と持ちかけられるが・・・全編ブラックなドタバタで、独特の味わいが魅力的。「モダン怪談」でも使われている骨格標本がなぜかこちらでも使い回され、奇妙なおかしみを作り出している。

8月31日(日)〜9月2日(火)

荻野茂二作品

「百年後の或る日」1932年(S7)/白黒/無声/7分
「AN EXPRESSION(表現)」1935年(S10)/彩色/無声/2分
「PROPAGATE(開花)」1935年(S10)/白黒/無声/3分
○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

『百年後の或る日』写真

『百年後の或る日』

戦前個人映画の世界で存在感を見せた荻野茂二。今回はSF・特撮色の強い三本をセレクトしてみた。「百年後の或る日」は、現存最古のジャンルSF映画といえる貴重な作品。東洋的デザインを取り込んだ官能的未来都市像がすばらしい。他にカラー抽象アニメ「AN EXPRESSION(表現)」と植物のライフサイクルを抽象化した「PROPAGATE(開花)」。

9月3日(水)〜6日(土)、9月10日(水)〜13日(土)

玩具映画 ※DVD上映

「火星飛行」「探偵ターチャン殺人電波」「正ちゃんの動物地獄」
「快傑たか」「夢現三百年往来」「忍術真田十勇士」「忍術大進軍」

『忍術大進軍』写真

『忍術大進軍』 写真提供:玩具映画プロジェクト(おもちゃ映画ミュージアム準備室)

大阪芸術大学の助成を得て「玩具映画プロジェクト」が収集したコレクションのうち、SF的要素を含むアニメ作品三本、実写作品四本を上映する。アニメ作品では動物専門の地獄で閻魔大王と戦う「正ちゃんの動物地獄」が、実写作品では極東作品の断片「忍術大進軍」が特に興味深い。いずれも富裕層の家庭向けに販売されたもので今となっては大変に貴重。

9月3日(水)〜6日(土)、9月10日(水)〜13日(土)

密林の怪獣群

1938年(S13)/大都映画/白黒/無声/41分 ※16mm

『密林の怪獣群』写真

写真提供:マツダ映画社

■監督:山内俊英/原作・脚本:有田彰夫/撮影:下村晴夫
■出演:大岡怪童、山吹徳二郎、雲井三郎、大山デブ子、大塚弘

「キング・コング」上陸の衝撃を受けて作られた大都映画の珍品。秩父の山奥で山岳部の女子大生と類人猿一家が出会う…設定ではあるが、類人猿らしさは皆無。山奥のマタギ一家のようになってしまった。未知の生物をどう描くかルールが定まっていなかった創成期の混乱を示す貴重な作品。今となっては異様な世界観がかえって面白い。

9月7日(日)〜9日(火)

續清水港 ※画面上のタイトルは再公開時の題「清水港 代参夢道中」

1940年(S15)/日活/白黒/89分 ○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

『續清水港』写真

©日活

■監督:マキノ正博/脚本:小國英雄/撮影:石本秀雄/音楽:大久保徳二郎
■出演:片岡千惠藏、廣澤虎造、澤村國太郎、志村喬、轟夕起子

現代の舞台劇演出家・石田が幕末にタイムスリップする。森の石松その人として扱われた石田は、金刀比羅宮参りをする羽目になる。石松はこの参拝の帰途で殺されており、そのことを知る石田は懸命に歴史を変えようとするが・・・森の石松もののSF的パロディであるが、太平洋戦争前夜の不安を巧妙に風刺した側面もある。

9月14日(日)〜20日(土)

孫悟空 前後篇

1940年(S15)/東宝映画/白黒/135分

『孫悟空 前後篇』写真

©東宝

■監督・脚本:山本嘉次郎/撮影:三村明/美術:松山崇/音楽:鈴木靜一
■出演:榎本健一、花井蘭子、李香蘭、岸井明、高峰秀子、柳田貞一、金井俊夫

エノケン主演で太平洋戦争前夜に制作された超大作。孫悟空は飛行機で空を飛び、科学技術で身を固めた金角・銀角と戦うというSF的演出が興味深い。特撮を担当した円谷英二は、持てる技術を尽くして、初のSF的画面づくりに挑んだ。金角・銀角の基地で、数十体のロボットが駆け回るシーンが、とりわけ強い印象を残す。

texy by 高槻真樹