9月17日(日)〜19日(火)

肉体の門

1948年(S23)/吉本映画、太泉スタジオ/白黒/87分 
○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

『肉体の門』写真

■監督:マキノ正博/原作:田村泰次郎/脚本:小沢不二夫/撮影:山崎一雄/美術:田辺達/音楽:大久保徳二郎
■出演:月丘千秋、田中実、逢初夢子、水島道太郎

戦後の東京、廃墟の中で売春婦として生きる女たちの掟は「恋愛禁止」。そんな一団に迷い込んだ若い娘・月丘千秋は、轟夕起子のリーダーに可愛がられるが、傷ついた復員兵に恋をしてしまう…。田村泰次郎の肉体文学のセンセーショナルな映画化で、後に鈴木清順監督で再映画化された。轟は汚れ役に初挑戦し、夜の女の悲哀とたくましさを熱演。

9月20日(水)〜23日(土)/27日(水)〜30日(土)

続清水港

※画面上のタイトルは再公開時の題「清水港 代参夢道中」
1940年(S15)/日活京都/白黒/90分 ※16mm

『続清水港』写真

©日活

■監督:マキノ正博/原作・脚色:小国英雄/撮影:石本秀雄/美術:角井平吉、上羽慶太郎/音楽:大久保徳二郎
■出演:片岡千恵蔵、広沢虎造、澤村アキヲ、志村喬、澤村國太郎

広沢虎造の傑作浪曲「石松三十石船道中」を基に、現代から江戸時代へタイムスリップするという奇想天外なSF時代劇。劇場支配人の千恵蔵は気がつくと、渡世人・石松に変身していた。最後に闇討されることを知っている彼は、その運命を回避しようとするが…。轟夕起子は千恵蔵に思いを寄せる純情娘を演じる。若き日のその可愛らしさは国宝級。

9月24日(日)〜26日(火)

青春怪談

1955年(S30)/日活/白黒/114分 
○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

『青春怪談』写真

©日活

■監督:市川崑/原作:獅子文六/脚本:和田夏十/撮影:峰重義/美術:中村公彦/音楽:黛敏郎
■出演:山村聰、三橋達也、北原三枝、瑳峨三智子、芦川いづみ、山根寿子

三橋達也と北原三枝の若いカップルは、合理的に結婚を準備中。一人残る父・山村聰を心配する北原は、三橋の母で未亡人の轟夕起子と再婚させようとするが、渋る山村とは正反対に、轟は大乗り気になって…。丸々と太った轟が、童女のように山村を熱愛する演技は抱腹絶倒。轟がコメディエンヌの才能を最高に開花させた、市川崑監督の大傑作。

10月1日(日)〜7日(土)

愛のお荷物

1955年(S30)/日活/白黒/110分

『愛のお荷物』写真

©日活

■監督・脚本:川島雄三/脚本:柳沢類寿/撮影:峰重義/美術:中村公彦/音楽:黛敏郎
■出演:山村聰、三橋達也、北原三枝、山田五十鈴、高友子、東野英治郎

人口抑制に取り組む厚生大臣の一家で、こともあろうに妊娠が続発。政治生命に危機を感じた大臣は、何とか出産を阻止しようと画策するが…。川島雄三監督がフランスの戯曲を洗練された喜劇に仕上げ、代表作の一本とした。大臣夫人に扮した轟夕起子は42歳にしてまさかの「出来ちゃった」。それを恥じらいながら夫に報告する表情が、めちゃカワイイ。

10月8日(日)〜10日(火)

銀座の女

1955年(S30)/日活/白黒/109分 
○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

『銀座の女』写真

©日活

■監督:吉村公三郎/脚本:新藤兼人、高橋二三/撮影:宮島義勇/美術:丸茂孝/音楽:伊福部昭
■出演:乙羽信子、北原三枝、日高澄子、藤間紫、南寿美子、長谷部健

花街を描かせたら天下一品のコンビ・吉村&新藤の隠れた傑作。銀座にほど近い芸者屋を舞台に、彼女たちの悲喜こもごもの生活をユーモアと皮肉で描いた風俗映画。若いツバメに翻弄される芸者屋の女将に扮した轟夕起子は、自身の女優歴の最も充実した時期に出演した作品。上映機会の少ない映画なので、今回お見逃しなく。

10月11日(水)〜14日(土)/18日(水)〜21日(土)

洲崎パラダイス 赤信号

1956年(S31)/日活/白黒/81分

『洲崎パラダイス 赤信号』写真

©日活

■監督:川島雄三/原作:芝木好子/脚本:井手俊郎、寺田信義/撮影:高村倉太郎/美術:中村公彦/音楽:真鍋理一郎
■出演:新珠三千代、三橋達也、芦川いづみ、河津清三郎、小沢昭一

東京の歓楽街・洲崎パラダイスで小さな飲み屋を営む轟夕起子のもとへ集まる訳ありな人々。駆落ち中の若い男女、それを口説く中年社長…。轟自身も、夫が若い情婦と蒸発中という苦悩を抱えていた。飲み屋を舞台にした辛口の人間模様。映画ファンの間では川島雄三の最高傑作とも評される。当時38歳だった轟の円熟した演技をご堪能ください。

10月15日(日)〜17日(火)

雑居家族

1956年(S31)/日活/白黒/110分 
○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

『雑居家族』写真

©日活

■監督:久松静児/原作:壺井栄/脚本:田中澄江/撮影:姫田真佐久/美術:木村威夫/音楽:斎藤一郎
■出演:織田政雄、伊藤雄之助、新珠三千代、左幸子、二木てるみ

壺井栄の新聞小説の映画化。子供のいない夫婦が他人の子ばかりを育て、温かな「雑居家族」を作る。そこへ左幸子のアプレ娘が出現し、大騒動に発展…。轟夕起子は壺井栄の分身ともいえる、短気だが愛情深い女流作家を好演。また轟とは共演の多かった伊藤雄之助がダメダメ男を怪演している。久松静児監督の最盛期に作られた愛すべき秀作。

text by 山口博哉(映画史家)

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