『果しなき欲望』写真

©日活

6月29日(日) 〜7月5日(土)

果しなき欲望

1958年(S33)/日活/白黒/101分

■監督・脚本:今村昌平/原作:藤原審爾/脚本:鈴木敏郎/撮影:姫田真佐久/美術:中村公彦/音楽:黛敏郎
■出演:長門裕之、中原早苗、渡辺美佐子、西村晃、殿山泰司、小沢昭一、菅井一郎、柳沢真一、芦田伸介

敗戦時に埋蔵した時価六千万円のモルヒネをめぐって五人の男女が浅ましい闘争を繰り広げるノワールな傑作。人間の卑小さ、滑稽さを重層的に活写した今村昌平の手腕が冴え渡る。貪欲な男どもを虜にする稀代の悪女渡辺美佐子が絶品だ。

『女教師 甘い生活』写真

©日活

6月29日(日) 〜7月5日(土)

女教師 甘い生活

1973年(S48)/日活/カラー/73分

■監督:小沼勝/脚本:安部真理/撮影:畠中照夫/美術:菊川芳江/音楽:真鍋理一郎
■出演:市川亜矢子、中島葵、安田のぞみ、丘奈保美、吉井亜樹子、大野木克志、八代康二、堺美紀子、浜口竜哉、沢田情児

潔癖症の一人の女教師を軸にして性に煩悶する思春期の高校生たちの生態を描く。ヒロインがペットの子猫や万引品を身にまとってオナニーに耽る描写が秀逸で、細く引き締まった肢体とバタくさい顔貌の市川亜矢子の魅力が堪能できる一篇。

『東京の暴れん坊』写真

©日活

7月2日(水) 〜8日(火)

東京の暴れん坊

1960年(S35)/日活/カラー/79分

■監督:斎藤武市/原作:松浦健郎/脚本:石郷岡豪/撮影:高村倉太郎/美術:中村公彦/音楽:小杉太一郎
■出演:小林旭、浅丘ルリ子、中原早苗、藤村有弘、小沢昭一、小川虎之助、森川信、三島雅夫、十朱久雄

“銀座の次郎長”と呼ばれる洋食屋の若旦那旭が恋と喧嘩に大活躍する「暴れん坊」シリーズ第一作。底抜けに明るい旭と恋人ルリ子のテンポの良い会話、〈渡り鳥〉のセルフ・パロディのようなコミック的な笑いが弾ける都会派喜劇の快作。

『人魚伝説』写真

©ディレクターズ・カンパニー/ATG

7月2日(水) 〜8日(火)

人魚伝説

1984年(S59)/ディレクターズ・カンパニー、ATG/カラー/110分

■監督:池田敏春/原作:宮谷一彦/脚本:西岡琢也/撮影:前田米造/美術:小川富美夫/音楽:本多俊之
■出演:白都真理、江藤潤、清水健太郎、神田隆、関弘子、江見俊太郎、榎木兵衛、宮下順子、青木義朗、宮口精二

鄙びた港町を舞台に、原発誘致にからむ陰謀で夫殺しの濡れ衣を着せられた海女の壮絶な復讐劇。監督池田敏春の狂気と荒ぶる魂が乗り移ったかのような血塗れの修羅と化した白都真理の大殺戮シーンは荒唐無稽さと悲痛さで映画史に残る。

『愛は降る星のかなたに』写真

©日活

7月6日(日) 〜8日(火)

愛は降る星のかなたに

1956年(S31)/日活/白黒/94分

■監督:斎藤武市/原作・脚本:猪俣勝人、糸永英一/撮影:横山実/美術:坂口武玄/音楽:斎藤高順
■出演:森雅之、山根寿子、浅丘ルリ子、高田敏江、小園蓉子、香月美奈子、二本柳寛、金子信雄、ボッブ・ブース

ゾルゲ事件の尾崎秀実が獄中から妻子に宛てた書簡集を元にした文芸映画。政治的なテーマよりも森雅之と山根寿子の夫婦愛を中心に描かれ、娘役の可憐な新人浅丘ルリ子も印象的。斎藤武市の家屋内の描写には師匠小津の影響が垣間見える。
○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

『姐御』写真

©日活

7月6日(日) 〜12日(土)

姐御

1969年(S44)/日活/カラー/88分

■監督:斎藤武市/原作:藤田五郎/脚本:青山剛/撮影:萩原憲治/美術:坂口武玄/音楽:小杉太一郎
■出演:扇ひろ子、江原真二郎、小林旭、葉山良二、岡崎二朗、青木伸子、内田良平、嵐寛寿郎、清水将夫、近藤宏

「無頼」シリーズの原作者藤田五郎の『女侠客』の映画化。跡目を継いだ夫を同じ組の幹部に殺されたヒロインが耐えて忍んだ末にドスを抱えて殴り込む。扇ひろ子の男勝りのキャラクターも魅力だが、助っ人役の小林旭が貫録で場をさらってしまう。

『濡れた欲情 特出し21人』写真

©日活

7月9日(水) 〜12日(土)

濡れた欲情 特出し21人

1974年(S49)/日活/カラー/77分

■監督・脚本:神代辰巳/脚本:鴨田好史/撮影:姫田真佐久/美術:渡辺平八郎/音楽:世田ノボル
■出演:片桐夕子、芹明香、絵沢萠子、古川義範、外波山文明、高橋明、粟津號、吉野あい、宝由加里、東八千代

旅芸人のようにさすらうストリッパーたちのバイタリティあふれる日常を描いた傑作。片桐夕子、芹明香の天衣無縫な魅力が全開し、はみ出し劇場の外波山文明を狂言回しに、時空や、劇と現実の境界を奔放自在に逸脱してしまう神代演出の真骨頂。

『愛と死をみつめて』写真

©日活

7月9日(水) 〜13日(日)、15日(火)

愛と死をみつめて

1964年(S39)/日活/白黒/118分

■監督:斎藤武市/原作:大島みち子、河野実/脚本:八木保太郎/撮影:萩原憲治/美術:坂口武玄/音楽:小杉太一郎
■出演:吉永小百合、浜田光夫、笠智衆、滝沢修、内藤武敏、北林谷栄、ミヤコ蝶々、笠置シヅ子

難病に冒された女性と恋人の往復書簡を纏めた同名のベストセラーの映画化。全篇、顔半分をガーゼで覆った吉永小百合の静かな熱演にスタッフはしばし涙したという。父親に笠智衆を配したのは、斎藤監督の師小津へのオマージュであろう。

Text by高崎俊夫