撮影監督 岡崎宏三の軌跡

解説中の「」内は、2003年7月29日に録音した岡崎宏三の作品コメントになります。詳細はパンフレットをご覧下さい。

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スケジュール
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岡崎宏三
下村一夫


喜劇 とんかつ一代  1963年 東京映画 95分 カラー 東宝スコープ
■製作:佐藤一郎、椎野英之/監督:川島雄三/脚本:柳沢類寿/原作:八住利雄/美術:小野友滋/録音:長岡憲治/照明:榊原庸介 ■出演:森繁久彌、淡島千景、加東大介、木暮実千代、フランキー堺


「とんかつからの見た目はできないか?って監督がいうわけだよ」
ナンセンス喜劇を得意とした川島雄三監督が亡くなる年に撮った作品。川島はとんかつが好きだったのか、とんかつと名のつく映画が他にもう一本ある。東宝調喜劇を踏襲した作風となっており、豪華キャストが右往左往の大あばれ。

喜劇 駅前温泉  1962年 東京映画 103分 カラー 東宝スコープ
■製作:佐藤一郎、金原文雄/監督:久松静児/脚本:長瀬喜伴/美術:小野友滋/録音:原島俊男/照明:今泉千仭 ■出演:森繁久彌、フランキー堺、伴淳三郎、司葉子、淡路恵子


「喜劇はスクリーンから観客の目をそらしてはいけない。今の若い監督に学んでほしい」
おなじみヒットシリーズの一本だが、シリアスなドラマの合間に岡崎は多数の軽喜劇作品を手掛けている。観光ホテルに客足をとられた温泉旅館の奮闘記。 

恍惚の人  1973年 芸苑社 103分 白黒
■製作:佐藤一郎、市川喜一/監督:豊田四郎/脚本:松山善三/美術:小島基司/録音:原島俊男/照明:榊原庸介/編集:山地早智子■出演:森繁久彌、高峰秀子、田村高廣、乙羽信子、篠ヒロコ


「手持ちカメラで森繁さんの芝居の客観と、徘徊老人の主観をワンカットで表現した」
有吉佐和子の同名小説の映画化。ラストシーンで、森繁は「冬のどしゃぶりの中でも容赦なく演技を続けさせた」岡崎に感動したという。痴呆老人と介護に病んでいく嫁。あえてこの時代にこそ観てほしい。

朝やけの詩  1973年 俳優座=東宝 130分 カラー
■製作:佐藤正之、椎野英之/監督:熊井啓/脚本:山内久、桂明子、熊井啓/美術:坂口武玄/録音:太田六敏/照明:榊原庸介/編集:中静達治 ■出演:仲代達矢、北大路欣也、関根恵子、佐分利信


「ロケ地の長野は監督の出身地。自然とそこに住む人たちへの思い入れが強い」
「忍ぶ川」「サンダカン八番娼館・望郷」と充実した仕事をしていた熊井啓と岡崎が初めて組んだ一本。信州の大自然を背景に、観光開発を目論む企業と自然破壊に反対する地元民の対立劇。関根恵子のヌードが鮮烈だ。

日本の青春  1968年 東京映画 130分 白黒 東宝スコープ
■製作:佐藤一郎、椎野英之、佐藤正之/監督:小林正樹/脚本:広沢栄/原作:遠藤周作/美術:小島基司/録音:原島俊男/照明:榊原庸介 ■出演:藤田まこと、新珠三千代、黒沢年男、酒井和歌子


「『切腹』の宮島さんのカメラとは違う画作りが、まず挑戦だった」
戦争で無気力になった男と反発する息子。親と子はなぜ理解し合えないのか?「家族」と「戦後」という主題に挑んだ小林監督との一作目。岡崎はイタリア映画「ブーベの恋人」を参考にした。

衝動殺人 息子よ  1979年 松竹=東京放送 131分 カラーワイド
■製作:飯島敏宏、杉崎重美/監督:木下恵介/脚本:砂田量爾、木下恵介/原作:佐藤秀郎/美術:重田重盛/録音:島田満/照明:佐久間丈彦 ■出演:若山富三郎、高峰秀子、田中健、大竹しのぶ


「驚いたのは富さんはリハから本気で転げ落ちるんだよ。いい役者だった」
木下恵介、岡崎宏三初コンビ作品。通りすがりに何の訳もなく殺される息子。納得出来ずにただ茫然とする夫婦が、その理不尽な行為に、もう二度とこのような事がおきないように運動を始める。雪の中、悲愴感をただよわせて立つ父をとらえたショットが圧巻。

波影 1965年 東京映画 107分 白黒 東宝スコープ
■製作:佐藤一郎、金原文雄/監督:豊田四郎/脚本:八住利雄/原作:水上勉/美術:伊藤憙朔/録音:原島俊男 照明:榊原庸介 ■出演:若尾文子、乙羽信子、中村賀津雄、大空真弓、沢村貞子


「地方色と豊田演出を、コントラストの強いフジの低感度フィルムで狙った実験作」
岡崎自身が白黒作品のベストにあげる作品。能登半島を舞台に置き屋の家に育った兄妹と彼らが姉のように慕う薄幸な芸者の物語。「シャドウをいれても魅力的な表情」若尾文子が美しい。

千曲川絶唱  1967年 東京映画 103分 白黒 東宝スコープ
■製作:佐藤一郎、椎野英之/監督:豊田四郎/脚本:松山善三/美術:幡野豊治郎/録音:長岡憲治/照明:榊原庸介/編集:広瀬千鶴 ■出演:北大路欣也、宮口精二、星由里子、田中邦衛、都家かつ江


「視覚的なシナリオと重厚な演出をマッチさせるのに苦労した」
白血病のトラック運転手と看護婦の悲恋ドラマ。語り草になっているトラックと列車の並走シーンを観た小林正樹は「岡ちゃん、あれはやりすぎじゃない?」と苦笑した。ラスト、光の中に浮き上がる星由里子の肢体がまばゆく美しい。