撮影監督 岡崎宏三の軌跡

解説中の「」内は、2003年7月29日に録音した岡崎宏三の作品コメントになります。詳細はパンフレットをご覧下さい。

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スケジュール
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岡崎宏三
下村一夫


六條ゆきやま紬  1965年 東京映画 107分 白黒 東宝スコープ
■製作:佐藤一郎、椎野英之/監督:松山善三/脚本:松山善三/美術:小島基司/録音:原島俊男/照明:榊原庸介/編集:広瀬千鶴 ■出演:神山繁、高峰秀子、中島孝幸、毛利菊枝、小林桂樹


「綺麗なだけではない雪の表現。白のトーンを四段階に分けた」
旧家に嫁いだ芸者が周囲の偏見と戦う姿をシュールな表現を駆使して描く。白と黒のディテールとコントラストに徹底してこだわった岡崎はこの作品と「波影」で数々の撮影賞に輝いた。高峰秀子の知られざる代表作。

化石  1975年 俳優座映画放送=四騎の会 200分 カラー
■製作:佐藤正之、岸本吟一/監督:小林正樹/脚本:稲垣俊、よしだたけし/原作:井上靖/録音:奥山重之助/照明:大西美津男 ■出演:佐分利信、岸恵子、小川真由美、栗原小巻、山本圭、佐藤オリエ


「原作者と監督がそろって満足してくれた。カメラマン冥利に尽きる仕事」
死を宣告された男が自らの人生の意味を問いながらフランス、スペインをさまよい歩く。テレビ用に十六ミリで撮影され、再編集後三十五ミリにブローアップして公開。その当時の技術も目をみ張る。日本テレビ技術賞受賞。

恋の浮島  1980年 スマフィルム 170分 カラー
■製作:高野悦子、パウロ・ローシャ/監督・脚本:パウロ・ローシャ/撮影:アカシオ・デ・アルメイダ、エルソ・ローク/美術:クリスティナ・レイス、バティカ、坂口武玄 ■出演:ルイス・ミゲル・シントラ、三田佳子


「ポルトガルの撮影部分はすでに終わって日本側だけを担当した」
オリヴェイラの助監督も務めたローシャ監督のポルトガル映画。徳島で没した文豪モラエスの生涯を描く観念的大作。ローシャとは後にヨーロッパを舞台にした「月の山々」(未)でも岡崎はコンビを組む。

ねむの木の詩  1974年 ATG 89分 カラー
■製作・監督・脚本・原作・音楽・出演:宮城まり子/録音:奥山重之助/編集:諏訪三千男 ■出演:ねむの木学園の子供たち


「子供たちの心象風景を捉えるために、全編をソフトな画調で統一した」
ドキュメンタリーのカメラマンとしての腕が発揮された作品。「グラマ島の誘惑」に出演していた宮城まり子が主催する養護施設「ねむの木学園」の日常を全く脚本なしでおいかけた。

華麗なる一族  1974年 芸苑社 212分 カラー
■製作:佐藤一郎、市川喜一、森岡道夫/監督:山本薩夫/脚本:山田信夫/原作:山崎豊子/美術:横尾嘉良、大村武/照明:下村一夫 ■出演:佐分利信、月丘夢路、仲代達矢、山本陽子、酒井和歌子


「華麗なる画調でないと話が成り立たないからね。下村も照明で苦労したと思う」
金融界の聖域、大手銀行の合併に暗躍する政官財のどす黒い人間模様を描く社会派ドラマ。撮影には銀行の協力は得られず困難を極めた。時代を先取りした作品。毎日映画コンクール撮影賞受賞。

GAMA 月桃の花  1996年 こぶしプロほか 110分 カラーワイド
■製作:海勢頭豊/監督:大澤豊/脚本:嶋津与志/美術:山崎秀満録音:瀬川徹夫/編集:吉田栄子 ■出演:朝霧舞、沖田浩之、川平慈英、島袋匠造、玉木初枝、新里奈津子


「米軍が残した当時の記録映像と画調をマッチさせて成功した」
終戦間近の沖縄を舞台に、戦乱の犠牲となっていく民間人親子の悲劇。終戦五十年を記念して製作された数々の戦争映画の中でも、戦闘シーンの迫力は群を抜いている。主演の朝霧舞は宝塚出身。

戦争と青春  1991年 こぶしプロ 112分 パート・カラー ワイド
■製作:大澤豊、岡村光雄/監督:今井正/原作、脚本:早乙女勝元/美術:春木章/録音:本田孜/編集:沼崎梅子/照明:下村一夫 ■出演:工藤夕貴、佐野圭亮、井川比佐志、奈良岡朋子、樹木希林


「カメラマンにはとてもきびしい監督だった」
「海軍特別年少兵」から二十年後、ふたたび今井正と組んだ作品。御殿場に昭和二十年当時の町並みを再現した巨大セットを組み、東京大空襲の炎上シーンを撮影した。日本アカデミー撮影賞受賞。

アイ・ラヴ・ユー  1999年 こぶしプロ 111分 カラーワイド
■監督:大澤豊、米内山明宏/原作・脚本:岡崎由紀子/美術:丸山裕司/録音:本田孜/編集:諏訪三千男 ■出演:忍足亜希子、岡崎愛、田中実、不破万作、多々良純、本宮泰風、宍戸開、西村知美


「手話がきちんとみえて、そして奥行きのある画。これは初めての経験だった」
実際に聴覚障害を持つ監督、俳優たちが参加した意欲作。ろう者の女性が劇団を旗揚げし公演するまでを描く。障害者映画にありがちな「暗さ」を全く排してからりと明るいホームドラマに仕上げ興行的に成功した。