時に光に、時に影に、岡崎を支えた相棒 照明技師 下村一夫 追悼特集 岡崎と下村の出会いは新興キネマ時代にさかのぼる。岡崎二十才、下村十八才の時のことである。現場を走り回る映画青年二人は、仕事が終ると公開される映画を片っ端からみて、語り合ったそうである。一本を除いて岡崎とのコンビ作で特集を組んだ。 解説中の「」内は、2003年7月29日に録音した岡崎宏三の作品コメントになります。詳細はパンフレットをご覧下さい。 作品解説1　作品解説2　作品解説3　作品解説4

いのちぼうにふろう　 1971年 東宝+俳優座映画放送 122分 白黒 シネマスコープ ■製作：佐藤正之、岸本吟一、椎野英之/監督：小林正樹/脚本：隆巴/原作：山本周五郎/美術：水谷浩/録音：西崎英雄 ■出演：仲代達矢、栗原小巻、酒井和歌子、中村翫右衛門、山本圭 「厚木に丸組みした安楽亭のセット。美術、撮影、照明が総力を結集した」 吹き溜まりに巣食う悪党どもが他人の恋のためにひとり、またひとり命を投げ出す。画面いっぱいの御用提灯にむかって斬り掛かってゆく仲代達矢のカッコよさ。武満徹の緊迫感あふれる音楽が秀逸。毎日映画コンクール撮影賞受賞。

がんばれ！盤獄　 1960年 宝塚映画 95分 カラー 東宝スコープ ■製作：藤本真澄、市川久夫/監督：松林宗恵/脚本：岸松雄、新藤兼人/原作：白井喬ニ/音楽：宅孝二/美術：加藤雅俊 ■出演：小林桂樹、志村喬、富士真奈美、小泉博、島崎雪子 「オリジナル版の撮影の吉田さんがセットに電話をくれたらしいんだ」 山中貞雄が三十三年に監督した「盤嶽の一生」を再映画化した作品。近年、市川崑監督もテレビシリーズでふたたびリメイク。吉田カメラマンと話せなかったことを岡崎はいまも悔やんでいる。

なつかしき笛や太鼓　 ※撮影：楠田浩之 1967年 木下プロ他 115分 カラー 東宝スコープ ■製作：藤本真澄、金子正且、木下恵介/監督：木下恵介/脚本：木下恵介/音楽：木下忠司/美術：松山崇/録音：中川浩一 ■出演：夏木陽介、大空真弓、浦辺粂子、小坂一也、藤原釜足 「別々の作品をやっていても下村とは連絡を取り合って互いの仕事を観ていた」 長年松竹に在籍していた木下恵介が退社して木下プロを設立して撮った本編第一作。瀬戸内海の小島に住む子供達のスポ根サクセスストーリー。

貸間あり　 1959年 宝塚映画 113分 白黒 東宝スコープ ■製作：滝村和男/監督：川島雄三/脚本：川島雄三、藤本義一/原作：井伏鱒二/音楽：真鍋理一郎/美術：小島基司 ■出演：フランキー堺、淡島千景、乙羽信子、桂小金治、山茶花究 「これだけの人数を縦横に動かす川島演出。シネスコ画面をいっぱいに活用できた」 欲と色気むき出しの川島イズムにあふれた「幕末太陽伝」と並ぶ傑作。が、当時の評価は散々で東宝社長の森岩雄は「こんな下品な映画観たことない」と閉口。「おかげで酒の回数が増えた」と川島は述懐している。

愛情不動　 1959年 宝塚映画 99分 白黒 東宝スコープ ■製作：滝村和男/監督：佐伯幸三/脚本：依田義賢/原作：長谷川幸延/音楽：真鍋理一郎/美術：近藤司/録音：鴛海晄次 ■出演：鶴田浩二、香川京子、花菱アチャコ、山田五十鈴 「豊田組の『花のれん』のセットの出来がいいから何かもう一本、という企画でね」 川島雄三、佐伯幸三、岡崎宏三の三トリオに宝塚映画内では気をつけろ！と言われていた。この中の二人が組んだ作品なのだから皆さんさぞかし気をつけて撮影にあたっただろう。佐伯監督、あだ名は「コンニャクトーチカ」。

恋すがた狐御殿　 1956年 宝塚映画 90分 白黒 ■製作：杉原貞雄/監督：中川信夫/脚色：笠原良三/構成：白井鉄造/原作：北条秀司/音楽：米山正夫/美術：加藤雅俊/録音：志木田隆一 ■出演：中村扇雀、美空ひばり、扇千景 「いまの国土交通大臣がでてるだろう？昔は可愛かったんだよな」 岡崎宏三が中川信夫と組んだ唯一の作品。原作は北条秀司の「狐と笛吹き」。愛しき妻に先立たれた笛師の春方が森の中で出会った可愛い少女は、実は昔春方が助けた子狐の化身だったという娯楽怪談時代劇ミュージカル。

アイ・ラヴ・フレンズ　 2001年 こぶしプロダクション 配給＝協同組合 全国映画センター 113分 カラーワイド ■製作：佐々木裕二、川崎多津也/監督：大澤豊/原作：山脇立嗣/音楽：佐藤慶子/美術：近藤司/編集：境誠一 ■出演：忍足亜希子、落合扶樹、藤田朋子、萩原聖人、田村高廣 「幽霊の合成は昔やった手法を使ってみた。うまくいってるんじゃないかな」 ろう者の女性を再び主人公にした第二作。京都を舞台にした女性カメラマンと息子の成長物語。脇を固める達者な俳優人の名演で今回もさわやかな良心作となった。盟友、下村一夫と岡崎の最後の仕事となった作品である。